暦注って何?暦注の種類、意味について

暦注(れきちゅう)とは、カレンダーや暦本(こよみに関する書物)に記載されている、日付以外の情報の事です。
暦注にはいくつかの種類があります。
どんな種類があるのか。また、それぞれに意味や由来があります。暦注の種類、意味や由来について解説します。

暦注とは

暦注(れきちゅう)とは、昔の暦の注記事項です。

暦注は、日付・節句・月の満ち欠けなど本来の事項の下に記載され、吉凶や季節を表すなど様々な情報です。

暦注の種類について

暦注には中段と下段、つまり、日々の暦の欄の中段(真ん中)に記載されている暦注と下段(下の方)に記載されている暦注のことです。

今回は、中段(十二直)と下段について紐解くこととします。

中段

中段には『十二直』が記載されています。つまり、中段と十二直は同意という事になります。

十二直

十二直は十二客(じゅうにかく じゅうにきゃく)ともいい、日々の吉凶をみるためのものと言われています。

十二直は、正倉院にある、日本最古の暦にも記載されている占いで、日々の吉凶を見るうえで、昔からよく利用されています。

十二直は次の十二語です。

十二直 読み 意味 吉凶

中吉
たつ 万物を建て生ずる日 神仏祭祀、婚礼、開店、開業、金銭授受など吉
動土、船に乗る、蔵開きは凶

小吉
のぞく 百凶を除き去る日 治療開始、種まき、仕事始め、服薬、祭祀など吉。
婚礼、見合い、出行、勝負事、井戸掘りは凶

大吉
みつ 万物満ち溢れて満という 祝い事、建築、旅行、開店、開業、移転等吉。
動土、服薬、鍼灸は凶

大吉
たいら 人間の万物を平分する日 婚礼、道路修理、壁塗り、旅行、祝い事など吉。
溝堀、動土、種まきは凶

小吉
さだん 善悪定まってとどまる日 建築、移転、婚礼、開業、開店、規則の制定など吉。
旅行、樹木の植え替え、訴訟など凶。

小吉
とる 物事を執り行う日 神仏の祭祀、婚礼、種まき、造作、移転など吉。
勝負事、訴訟、庫開き、多額の支出など凶。

やぶる 物事を突破する日 訴訟、談判事、服薬など吉。
開店開業、旅行、建築、婚礼、祝い事など凶。

大凶
あやふ
あやう
万事において危惧する日 家づくり、種まき、婚礼、酒造り、木を切るなど吉。
高い所に上る、旅行、舟に乗るなど凶。

小吉
なる 物事が成就の日 家づくり、婚礼、立願、開店開業、移転など吉。
訴訟、争い事は凶。

小吉
おさん 物事を取り収める日 婚礼、家造り、いろいろ買い納めるに吉。
葬送、出行、鍼灸、神仏祭祀、大掃除など凶。

小吉
ひらく 開けて通じる日 婚礼、就職、移転、種まき、開店、商品仕入れに吉。
葬式、出行、鍼灸には凶。

とづ
とず
陰陽の気が閉じ塞がって、通れない日 建墓、池を埋める、穴をふさぐ、修繕、葬式など吉。
棟上げ、婚礼、開店開業、祝い事、事始めは凶。

 

下段

暦注下段は日々の吉凶を表す暦注で、昔の暦の最下段に書かれていたため「下段」または「暦注下段」「暦の下段」と呼ばれるようになったそうです。

歴史を紐解くと、『下段』は、迷信的な要素が強いため、その弊害も著しいと、国家権力により、過去三回も禁圧されたそうです。
平城天皇の大同2(807)年に暦注が廃止された官製の暦が発行されましたが、庶民にはまったく不評で、3年後に再び官暦に暦注が復活し、記載されるようななったそうです。
明治5年(1872年)、旧暦からグレゴリオ暦へ移行するときに政府によって禁止されましたが、「おばけ暦」という非公認の暦に引き続き記載され、生き残りました。
太平洋戦争中にも紙不足のため暦注付きの暦が廃止されました。
戦後は自由に出版されるようになり、現代に至ります。
暦注は庶民には根強く支持されてきたと言えます。

受死日(黒日)(じゅしにち・くろび)

暦の下段に、●のしるしが書かれている。
この日は、最低の大悪日です。
したがって、同じ日の他の暦注は一切見る必要がないと言われます。
ただし、葬式だけは差し支えないとされています。

十死日(じゅうしにち)

受死日(黒日)に次ぐ凶日とされ、すべてのことに関して大悪日です。
受死日と違い、葬式も凶と言われています。

五墓日(ごむにち)

凶の日です。
屋つくりは構わないが、土を動かす、地固め、葬送、築墓、種まき、旅行、祈祷は凶とされる。

帰忌日(きこにち)

「きいみび」とも呼ばれる、凶日です。
旅行先からの帰宅、里帰り、貸し出した金や物の返却、移転、嫁取りなどすべて凶

血忌日(ちいみにち)

何ごとにも血を見ることに凶日。
特に、死刑執行、狩猟、鍼灸、奉公人の雇い入れも凶とされる。

重日(じゅうにち)

この日行った事は、重なって生じるとされ、吉事にはこの日を用いてよいが、凶事は凶とされる。
吉:衣類の裁ちはじめ、着初め、商売事、初入学など
凶:治療、種まき、出家、仏事など

復日(ふくにち)

重日とほとんど同じ。
この日に吉事を行えば吉が重なり、凶事を用いれば凶事がかさなる。
ただし、婚礼は再婚に通じることから凶である。
また、この日に善行を行えば大吉とされます。

天火日(てんかにち・てんかび)

五貧日ともいう。
天に火気が甚だしいという意味で、三箇の悪日のひとつ、狼癪日と同じ日だとする説もある。
凶: 棟上げ、屋根ふき、家屋の修繕など。

地火日(じかにち)

大地に火気激しく、地気炎上の凶日。
凶:土を動かすこと、礎を置くこと、柱建て、井戸掘り、種まき、築墓、葬送など。

 

七個の善日

暦注下段の吉日の7つを『七箇の善日』と言います。
大明日(だいみょうにち、だいみょうび)・・大吉日
鬼宿日(きしゅくび)・・・・・・・・・・・名誉、長寿を祝う日に最良
天恩日(てんおんにち、てんおんび)・・・・吉事に用いて大吉だが、凶事に用いてはならない
神吉日(かみよしにち、かみよしび)・・・・万事神事に関することは吉とされる日
母倉日(ぼそうにち)・・・・・・・・・・・特に婚姻は大吉と言われる。普請、造作も吉
月徳日(つきとくにち、がっとくにち)・・・家の増改築、土にかかわる行いに吉
天赦日(てんしゃにち、てんしゃび)・・・・天が赦(ゆる)す日。極上の大吉日

三箇の悪日

『三箇の悪日』は、大禍日、狼藉日、滅門日の3つの凶日の総称です。

  • 大禍日(たいかにち)・・最も悪い日。特に口舌を慎む。家の修理、船旅、葬送は特に凶。
  • 狼藉日(ろうしゃくにち)・・万事に凶。天火日と同じだとする説。
  • 滅門日(めつもんにち)・・万事に凶。もしこの日に犯せば、必ず一家一門を亡ぼすとされる。
時下食(ときげじき)

下食時(げじきどき)ともいう。
流星の一種とされる天狗星(てんこうせい)の精が、食事の為、下界へ降りてくる時間とされる。
これは、日の吉凶ではなく、その日のある時間(一辰刻)だけを忌む暦注。
暦には「下じきさるのとき」などと記される。
この場合、申の辰刻のころだけを慎めばよいという意味。

歳下食(さいげじき)

時下食と同じように、天狗星(てんこうせい)の精が、食事の為、下界へ降りてくる日。
時間に関係なく一日中ではあるが、この日は、軽い凶日とされています。

区会日(くえにち)

「くえび」とも言います。
陰と陽の二気の調和がうまくいかず、万事忌む日とされています。
悪いことの集まる凶日で、この日に吉事を行うのは、凶とされます。

往亡日(おうもうにち)

字のごとく、「往(い)きて亡(ほろ)ぶ」日とされ、遠行を凶とします。
移転、婚礼なども凶。

さいごに

暦注とは全ての人に関わる、その日の吉凶です。
今日はお日柄がいい、悪いというのは正にコレから来ています。
中段、下段についてまとめてみました。

毎年、暦の本を購入しますが、こんなにも沢山の意味があり、こんなにも沢山の言い伝えがあるとは、まことに恐れ入った次第です。
古来より、人は、悪い事が起らぬよう戒めとして、また、吉日は大いに活用すべしと伝えてきた。
先人の言葉です。
何度も暦への掲載が禁止されたにも関わらず、こうして今の世に長い年月伝わってきたという事実を鑑みても、侮ってはいけないと思われます。

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